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統合失調症の方の相談



弁護士として対応に苦心した事例として、紹介報告します。
30代男性からの法律相談

<相談の内容>
「著名な某宗教団体(*)から、しつこく勧誘されて困っている。
日本から離れたら無くなるだろうと思って、海外に行って就職したけれど、そこの就職先でも勧誘してきたので、辞めて日本に帰ってきた。現在は、東京都内で就職し、生活している。」
(*)誰もが知っている有名な宗教団体ですが、本件事案の趣旨とは直接関係ないので名称は伏せます。

「勧誘行為を止めさせたいので、弁護士から内容証明で、警告書を送ってほしい。つきまといをする人物の名前と住所は分からないけれど、その宗教団体の本部に送ってほしい。」

もしやと思ったので、当職から具体的に質問して聞いてみたところ、
「どこに行っても、つきまとってくる。
最近は、電車の中でも、常に勧誘してくる。
その人の姿は見えないけれど、声だけで勧誘してくる。」

真剣な相談で、病識が全くありませんでした。

<他の弁護士事務所>
このような相談を受けた時、弁護士としてどう対応すべきか。
必ずしも正解が決まっているわけではありません。

当職から、「これまで弁護士に相談したことはありますか?」と聞きました。すると、
「これまで10軒以上弁護士事務所に相談したが、宗教問題は専門外で扱っていない等の理由で、どこも受任してくれませんでした。」

これを聞いて、かわいそうになりました。
見せかけの理由を言ってお断りし、相談者と関わりを持たないことを選択する弁護士が多いのでしょう。

<当職の考え>
相談を聞いて、すぐに統合失調症の幻聴症状だと分かりました(司法修習時代に、そうした刑事事件を取り扱う弁護士の先生の下で、修習した経験から。)。
本人の為には、早く適切な治療や投薬を受けさせた方が良い。放置すればどんどん病状が悪化する。
しかし、本人の依頼は、あくまで内容証明の送付の依頼。
弁護士として、どうすべきか?

依頼を断るのが、弁護士としては正解かもしれない。
でも、これを断っても、この方は、ずっと弁護士事務所を回り続け、何の解決にもならない。

当職は、このように答えました。
「宗教組織は、非常に大きな相手です。弁護士が内容証明を送っただけでは、勧誘は止まないでしょう。場合によっては反撃してくるかもしれません。弁護士だけでなく、ご家族のサポートも必要だと思います。ご家族と連絡を取っても良いですか?」

<当職の対応>
ご家族に連絡を取ることはかなり渋っておられ、その場では、同意頂けませんでした。
後日、電話で相談を続けて、ようやくご両親(関東以外の県に在住)に連絡をとることの同意をもらえました。

お母様と電話で話したところ、過去にも統合失調症があり、薬で治癒したが、再発には全く気付かなかった、連絡頂けてありがとうございますと非常に感謝されました。
しかし、相談者本人は家族と会いたくないという状況でした。

<病気に全く気付かない職場>
相談者本人の住所がわからなかったので、母親から、職場に問い合わせてもらいました。
ところが、母親が疾患について説明をしても、会社側は「本人の同意が無いので、家族にも住所を教えられない。本人はいたって健康で、全く仕事上も問題無いので、疾患があるようには見えない。」とのことで、回答が得られませんでした。
大きな工場の人事担当者でも統合失調症を知らないとは。

<その後>
このような状況から、相談者とご家族とが会うには苦労があったのですが、当職も協力して何とか会ってもらうことが実現し、ご家族の説得によってご家族の車で実家に帰られ、統合失調症の治療を再開されたとのことでした。


<感想>
弁護士が事件を受任するかどうかは自由です。相談を断ることも自由です。
でも本件は、本当にそれでいいのだろうかという疑問を持ちました。
ただ、当職の対応は一歩間違えば、リスクもあり得ます。

正解は人それぞれだろうと思います。

自分としては、何もせずに見ないふりは、心情的にできませんでした。
後日、ご家族から、治療状況や感謝のご連絡を頂きました。