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企業再生案件 2009-2010



当職が初めて民事再生申立を取り扱った案件を紹介します。
最初に扱った案件は特に思い入れの深いものです。
法律面はもちろんこと、企業経営に間近に関与して社会的経験としても多くのことを学ぶ機会になりました。当時20代の自分としては、なかなか見聞きできない貴重な経験をさせてもらいました。
(前に所属した事務所にて、3人の弁護士で担当)

<事案の概要>
依頼者は、食品の製造事業を営み3つの工場を運営する会社、及びその社長夫妻。真面目で実直な方で、商品開発や安全安心な食品製造に誇りをもっておられた。
2004年頃、商品が大ヒットし、コンビニでも取り扱われた。コンビニでの取り扱いには欠品を生じないようにする必要があり、銀行等からの借り入れを受けて設備の拡充を行った。従業員100名超、主力商品の売上げは年商10億に達した。
しかし、ビジネスの世界は変化も速い。大手メーカーが類似商品を製造し、競争が激化。コンビニもこちらの商品を取り扱い続けるとは限らなくなった。以後売上が下がり、大幅な赤字損失を計上。リストラを行ったものの、売上を回復できず資金繰りがショートしてしまった。
大手に比べて、中小企業は、商品がヒットしたことで皮肉にもかえって命取りになることもあるという。
負債総額12億円。現従業員約40名。工場・機械を生かして、何とかできないかという相談。

<再生に向けて>
相談を受けてすぐに、我々はスポンサーとなる企業(会社を買い取ってくれる先)を探しました。社長とともに大口取引先とも面談交渉しました。様々なツテをつかって、取引関係の無い他の大手食品事業会社の社長にも、面談させて頂きました。また、何社か、実際に工場を見学して頂き(現地デューデリジェンス)、当職も複数回立ち合いました。
資金繰りがショートしている状況では、1日、1日を無駄にできない緊張した状態でした。

取引先や従業員にも説明会を行いました。取引先(原材料業者や運送業者)にお金が支払えないことを説明すると、「うちも連鎖倒産してしまう」と詰め寄られることもありました。
従業員には給与支払の目途がたたず、事業を停止して、一旦解雇し、失業保険を受けて頂き、その間に何とか再生したいという説明会を行いました。社長にとっても、従業員にとっても、苦渋ながら、それしか方法は無く、説明会に立ち会って感慨深いものがありました。

<スポンサーが決まった!?>
上記多数の交渉にあたった結果、大手食品会社S社に、スポンサーを引き受けてもらえることになりました。条件も概ね煮詰まってきました。
と思った矢先、別の大手食品販売会社K社も名乗りを上げ、より好条件を提示してきました。見つからないと心配していたら、今度は、2つから受けるという予想外の状況に、喜ばしい反面、かえってかなり苦労もしました。
S社は、遠方から現地に従業員を転勤させるなど、既に着手しており、損害賠償を払わざるを得ない状況にあり、お金が無い状況で、どうやって賠償するか苦心しました。道義的責任も勿論感じました。

<民事再生>
K社をスポンサーとする方針で、裁判所に民事再生申立て(プレパッケージ型)。
早速、金融機関(後順位担保権者含む)や機械類リース会社との間で、交渉。金融機関やリース会社は、工場土地建物や機械類に担保権をもっており、担保権を実行されると再生が破綻してしまいます(別除権)。K社が出せる買収資金の範囲内で、ギリギリの交渉が続く。
最終的に、別除権協定がまとまり、また民事再生における一般債権者への弁済配当率(約3%)も決まり、再生計画案を裁判所に提出して、債権者の大多数の同意を得て可決、認可。
(一言でまとめていますがこの間にも、裁判所及び監督委員の弁護士の先生と何度も協議、打ち合わせをした苦労があります。監督委員の先生には本件事業の再生にご理解を賜り、ご助言も頂き、大変感謝しました。)

<結果>
以上の民事再生の結果、依頼者の会社事業を、全てK社へと事業譲渡し、事業譲渡代金から、金融機関、リース会社、一般債権者へ金額を配分しました。
工場は、K社のもとで今も稼働しています。



<再生の社会的意義と弁護士としての醍醐味>
1年間以上にわたって弁護士として注力し、非常に多くの当事者の中で利害調整に奔走した案件ですが、その結果としては、全ての当事者にとって、Win Winな着地をさせることができたように思います。
各当事者ごとに、その利益状況を整理しておきたいと思います。

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倒産しかかった会社を買収することで、中古価格で工場・機械一式を手に入れることができた。一から設備投資をして工場を建設するのに比べれば、ずいぶん安く工場及び機械を取得できた。
もし破産後に競売等で安く買収する場合には、工場やリース機械は別々に買わなければならないため、一式そろえるのは困難。従業員を一から募集する手間もかかる。

従業員
希望者全員、K社で雇用が維持され、失業しなくてすんだ(なお、前述の解雇はその後撤回できた)。地元のハローワークも安心した様子。

社長夫妻
経営責任をとり、当然社長ではなくなりますが、K社のもとで工場長として雇用され、今も食品製造の仕事を続けておられます。
従前は、商品の販路を確保・開拓するための営業の苦労もありましたが、大手の傘下に入れば、販路に関する苦労は軽減したと考えられます。
社長の真面目な性格や私財を投じて事業を行ってきた経緯から、取引先や金融機関も、再生を承認してくれたと感じます。

取引先
本件で破産になった場合、担保権の無い一般債権者の配当率はゼロ%でした。
民事再生の弁済率も非常に低いものでしたが、無よりはマシ。
また、その点以上に、今後も取引継続ができることに意味がある。事業がなくなれば、その分、売上が減少するが、事業が継続すれば、今後の売上や取引利益は継続が見込める。

金融機関
一番多額の損失を出したのは、銀行です。しかし、金融機関にとっても、破産よりはマシ。工場不動産を競売した場合、上記のとおり、もはや事業としての一体性は失われてますので、土地のみの値段は非常に廉価になります(逆に工場の解体費用で値が下がる可能性もある)。そんな土地誰も買わない。
別除権協定による回収額は、満額の回収には遠く、大幅な損失にはなりましたが、それでも競売よりはマシで、K社の買収金額と折り合ったわけです。
なお、破産もせずに不良債権を放置したままというのも、金融機関としては損金処理ができず、困るので、再生又は破産等の法的手続きを望むという側面もあります。
また、地元の雇用維持という社会的意義も考慮して頂けたと思います。

リース会社
金融機関と概ね同様です。リース機械(所有権留保)は、裁判所の競売ではなく、中古市場で売ることになります。中古市場で売るのがよいか、スポンサーに一式まとめて売るかという選択になります。

 競売・中古市場バラ売(破産)< 一式まとまった中古価格(再生)< 新品価格


破産になった場合、最悪の場合は、
土地工場は荒廃して競売でも売れず、金融機関は債権回収できず、従業員や元社長は、働く場を失い、取引先も事業が縮小する。
これは社会的に損失です。

それを回避して、関係当事者の利害を調整して、事業と雇用を継続することに、再生の醍醐味を感じた案件でした。


この他にも社長の奥様の大病や、デューデリで工場視察に来た会社と元従業員の裏切りによる一部競業等、ほかにも幾つも、危機的状況がありましたが、全ては書き切れないので、このあたりでまとめておきたいと思います。